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情報不足なことからも目的に沿った物質の入手には種々の問題が派生し、予定した物質の入手が不可能となった。この様な状況下で測定対象として入手した物質は、下記の15品目、23種類(94年度-10品目、12種類、95年度-9品目、11種類)である。
(A) 鉄精鉱
 鉄精鉱は、銅精練から派生する鉱さいの一種であり、提供された物質の状態は微粉精鉱と全く変わらず、粒度も約97%が0.045mm(325mesh)以下の微粉である。本来、微粉精鉱の範疇に入る物質であるが、業界では鉱さいとして取扱っている関係上、測定の対象とした。
(B) レッドドロス
 レッドドロスは、鉛精練の際に生じる鉱さいであるが、レッドドロスには鉛精練から派生する金属を含んだ滓と鉛鉱石の採鉱時に派生する滓との2通りあることが判明した。
 今回、提供された物質は金属が全く見受けられず、約92%が0.045mm(325mesh)以下の微粉であることから後者の採鉱時に派生した滓と考えられ、類似物質とは異なる粘着性を有する微粉精鉱の類である。
(C) 石 膏
 石膏には、天然石膏と人工的に製造または副生する化学石膏とがある。化学石膏には燐酸等の化学工業の製造工程で副生する“副生石膏”と、非鉄精練、弗酸製造等その生成工程中で発生する硫酸に石灰を合成して造る“合成石膏”(回収石膏)とがある。また、公害防止の目的で、火力発電所等の化石燃料からの排煙を脱硫して回収する“排煙石膏”も回収石膏の一種である。今回、測定用に提供されたものは後者の化学石膏であり、約90%が0.150mm(100mesh)以下の粉末である。 石膏の水分乾燥温度は、結晶水を含むために105℃では結晶水も揮散するので45℃以下にて行なった。
(D) 消石灰
 別名を水酸化カルシウム又は石灰乳とも称し、最も廉価なアルカリ性の物質であり、セメント、肥料、中和剤等広範囲に使用されている。粒径は約90%が0.075mm(200mesh)以下の微細な粉末である。
(E) 珪酸鉄
 珪酸鉄は、鉄精鉱と同様に銅精練から派生する鉱さいであるが、微粉が少なく粒径1.00mm(16 mesh)以上が約71%を占める粒状の物質である上に、水分を殆ど吸収しないために液状化現象が発生し難いものと考える。従って、有姿試料の測定の他に同一試料を用いて、1.00mmにて篩分けて上下夫々と有姿試料を1.00mm以下に粉砕し粒径を細かくしたものと3種類の供試料を作製し、夫々流動水分値を測定し有姿試料と粒度構成を変えた場合との比較を行なった。
(F) ニッケルスラグ(グリーンサンド)
 ニッケルスラグは、ニッケル精練の際に派生する鉱さいであり、珪酸鉄と同様に水分を殆ど吸収しない上に、微粉が少なく粒径1.00mm(16mesh)以上が約85%を占める粒状の物質である。粒度が粗いために液状化現象が発生し難いものと予測されるので、珪酸鉄と同様に有姿試料と粒度構成を変えた場合との比較を行なったが、珪酸鉄と同様の結果が得られることが予測される。

 

 

 

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